有益な情報だけでは、人はもう動かない
SNSやYouTubeで発信していると、どうしてもこう思ってしまいます。
ちゃんとしたことを言わなきゃ。
有益なことを言わなきゃ。
正しい情報を、わかりやすく、きれいに届けなきゃ。
特に、何かを教える立場だったり、商品やサービスを届ける立場だったりすると、なおさらです。
失敗は見せない方がいい。
弱さは隠した方がいい。
迷っているところは出さない方がいい。
そんなふうに、いつの間にか「完璧な発信者」でいようとしてしまう。
でも、長く情報発信を続けてきた今、私は少し違うことを感じています。
人の心に残るのは、いつも完璧な言葉とは限りません。
むしろ、少し不完全で、少し揺れていて、でも本気で前に進もうとしている言葉の方が、深く届くことがあります。
私がYouTubeを始めた頃のこと
私がYouTubeチャンネルを開設したのは、2016年でした。
(あ・・・開設自体は2015年だったかな・・・)
今でこそ、YouTubeでビジネスやマーケティングの話をする人はたくさんいます。
でも当時は、今ほど多くありませんでした。
特に2017年頃、私はキーワード選定のやり方や、アフィリエイトの方法、記事の書き方、Web集客の考え方など、かなり具体的なノウハウを発信していました。
当時は、YouTubeでそうした個別具体的なビジネスノウハウを体系的に話している人が、まだほとんどいなかったんです。
だからこそ、有益な情報をわかりやすく届けること自体が、差別化になりました。
「この人の動画を見ると勉強になる」
「ブログやWeb集客のことがわかる」
「具体的に何をすればいいかが見える」
そう思ってもらえることが、そのままポジションになっていた時代でした。
もちろん、当時の私はとにかく必死でした。
どうしたら伝わるか。
どうしたらわかりやすくなるか。
どうしたら見てくれた人の役に立てるか。
そのことばかり考えていました。
私がYouTubeを始めてから今日に至るまでのすべてを記録したメルマガもぜひ!
https://kyoko-magazine.jp/youtube_kigyo/
でも、ある時点から空気が変わっていきました。
2019年頃から、YouTubeの空気が変わった
2018年後半から2019年頃にかけて、YouTubeの世界は少しずつ変わっていきました。
ビジネス系YouTuber、投資系YouTuber、教育系YouTuber。
そうした人たちが目立ち始め、YouTubeは単なる娯楽の場所ではなく、個人が専門性を発信し、ビジネスにつなげる場所になっていきました。
それまでは、YouTubeでビジネスノウハウを話しているだけでも珍しかった。
でも、だんだんそれが当たり前になっていった。
そして今は、さらにAIがあります。
正しい情報。
網羅的な情報。
きれいに整理されたノウハウ。
わかりやすい要約。
こうしたものは、以前ほど希少ではなくなりました。
AIに聞けば、一瞬でそれらしい答えが返ってくる。
構成も作れる。
文章も整う。
要点もまとめられる。
だから、今はもう、ただ有益な情報を出すだけでは選ばれにくい時代になっているのだと思います。
もちろん、有益であることは大切です。
間違ったことを言っていいわけではないし、薄い内容でいいわけでもありません。
でも、正しい情報を言えること。
網羅的にまとめられること。
わかりやすく整理できること。
それだけでは、もう人の心には残りにくくなっている。
では、何が人の心に残るのか。
私自身の発信人生を振り返ると、その答えが少し見えてきます。
伸びたのは、完璧な話をしたときではなかった
私の発信の中で、
「あ、このタイミングで人との距離が変わったな」
と感じた瞬間があります。
それは、完璧なノウハウを話したときではありませんでした。
離婚したことを話したとき。
うまくいかなかったことを話したとき。
苦しかった時期や、思うように進めなかったことを話したとき。
そういう、少し個人的な話をしたときでした。
正直、こういう話を出すのは怖いです。
「そんなことを話したら、信頼を失うんじゃないか」
「弱く見えるんじゃないか」
「ビジネスを教える立場なのに、失敗を見せていいのか」
そう思う自分もいました。
でも、実際には逆でした。
ノウハウだけを話していたときよりも、
自分の失敗や葛藤を少し話したときの方が、
人との距離が縮まった感覚がありました。
「私も同じです」
「その話を聞いて安心しました」
「KYOKO先生にもそういう時期があったんですね」
そんな反応が返ってくるようになったのです。
そこで気づきました。
人は、正しい情報だけで動くわけではない。
人は、完璧な人にだけ惹かれるわけでもない。
むしろ、
“この人も自分と同じように悩んできたんだ”
と思えた瞬間に、心を開くのかもしれない。
人は、長所で尊敬され、短所で愛される
ここで、とても大事な心理があります。
人は、完璧な人を見ると「すごい」と思います。
でも、必ずしも「近づきたい」と思うわけではありません。
完璧な人は、尊敬されます。
でも、距離も生まれます。
一方で、少し不器用なところや、うまくいかなかった経験や、迷った時間が見えたとき、人はその相手に急に親近感を持ちます。
「あ、この人も同じなんだ」
「この人も最初からできたわけじゃないんだ」
「この人の言葉なら、自分にも関係あるかもしれない」
そう感じた瞬間に、情報はただのノウハウではなくなります。
この心理を、心理学ではプラットフォール効果と呼びます。
プラットフォール効果とは、簡単に言うと、
能力のある人が小さな失敗や弱さを見せることで、かえって好感度が高まる現象のことです。
ここで大事なのは、ただ失敗すればいいわけではないということ。
何の信頼もない人が、ただ失敗談ばかり話していたら、聞き手は不安になります。
「この人、大丈夫かな?」
「本当に任せていいのかな?」
そう思われてしまう。
でも、先に実力や誠実さ、積み上げてきたものが伝わっている人が、少しだけ弱さを見せると、その弱さはマイナスではなくなります。
それは、欠点ではなく、人間味になります。
つまり、発信で大事なのは、
長所で尊敬されること。
短所で愛されること。
この両方です。
長所だけでは、遠い人になる。
短所だけでは、不安な人になる。
でも、長所と短所が重なったとき、その人は「信頼できる人」になります。
スラムダンクが愛される理由も、ここにある
この話を考えるとき、私はスラムダンクを思い出します。
スラムダンクの登場人物たちは、みんな魅力的です。
でも、誰も完璧ではありません。
桜木花道は、驚異的な身体能力を持っています。
でも、バスケは未経験で、すぐ調子に乗る。
流川楓は、圧倒的な得点力があります。
でも、チームプレーが苦手。
三井寿は、天才シューターです。
でも、過去のブランクと体力のなさを抱えている。
宮城リョータは、スピードとパスでチームを動かします。
でも、身長というどうにもならない壁がある。
赤木剛憲は、努力家でチームの柱です。
でも、自分が努力できるからこそ、周りにも同じ水準を求めすぎてしまう。
もし全員が最初から完璧だったら、スラムダンクはここまで愛されていたでしょうか。
きっと、違ったと思います。
「すごいキャラクターだな」とは思われたかもしれない。
でも、「自分のことみたいだ」とは思われにくかったはずです。
人は、キャラクターの長所に憧れます。
でも、欠点や葛藤に自分を重ねます。
だから応援したくなる。
だから記憶に残る。
だから何年経っても忘れられない。
これは、発信も同じです。
すごい情報だけでは、尊敬される。
でも、失敗や迷いや葛藤が見えたときに、共感される。
そして共感された言葉は、ただの情報よりもずっと深く残ります。
AI時代に価値が残るのは「文脈」
今、情報の価値はどんどん変わっています。
知識は検索すれば出てきます。
要約はAIがしてくれます。
構成も、文章も、ある程度はAIが整えてくれます。
だからこそ、これからますます大事になるのは、
その人の文脈だと思っています。
どんな経験をしてきたのか。
何に悩んできたのか。
どこでつまずいたのか。
なぜ、その考えにたどり着いたのか。
同じノウハウでも、誰が、どんな人生の流れの中で語るかによって、伝わり方はまったく変わります。
たとえば、
「継続が大事です」
という言葉は、誰でも言えます。
でも、失敗して、遠回りして、何度もやめそうになりながら、それでも続けてきた人が言う「継続が大事です」は、重みが違います。
「発信には人間味が必要です」
という言葉も同じです。
ただのマーケティング論として語るのと、実際に有益ノウハウだけで戦ってきた時期があり、そこから自分の離婚やうまくいかなかった経験を話すことで、人とのつながり方が変わった人が語るのとでは、まったく違う。
人は、情報ではなく、文脈ごと受け取っているのです。
弱さを見せることと、弱さに逃げることは違う
ただし、ここは誤解してはいけません。
「じゃあ、弱みをどんどん見せればいいんだ」
という話ではありません。
プラットフォール効果が働くには、順番があります。
まず必要なのは、実力や信頼の土台です。
ちゃんと価値を提供している。
学びがある。
経験がある。
見ている人にとって役に立つ。
その上で、人間らしい弱さや失敗が見えるから、信頼が深まる。
逆に、土台がないまま弱さだけを出すと、
「この人、大丈夫かな?」
と思われてしまいます。
私も、最初から自分のプライベートや失敗だけを話していたら、今のような関係性は作れなかったと思います。
最初は、有益な情報を届けることに徹していました。
それで、
「この人はちゃんと教えてくれる」
「この人の話は役に立つ」
という土台ができた。
その上で、少しずつ自分の経験や失敗を話すようになったから、受け取られ方が変わったのだと思います。
つまり、発信で大事なのは、
有益性だけでも弱い。
人間味だけでも弱い。
有益性と人間味が重なったときに、信頼になる。
ということです。
個人発信は「情報」ではなく「人」が選ばれる
これからの時代、ただ正しいことを言うだけでは難しくなります。
正しいことなら、他の人も言える。
AIも言える。
もっと早く、もっときれいに、もっと網羅的に言える存在も出てくる。
だからこそ、個人が発信する意味は、
その人の人生や経験を通して語ることにあります。
大企業のように広告費があるわけではない。
有名人のように最初から認知があるわけでもない。
でも、自分の経験や失敗、価値観を通して言葉を届けることができる。
それは、AIにも大手にも真似しにくい部分です。
なぜなら、AIは情報を整理できますが、あなたの人生を生きることはできないからです。
失敗したときに何を感じたか。
うまくいかなかったとき、何を考えたか。
それでも続けてきた理由は何か。
そういうものが、発信の中ににじみ出たとき、人は「この人から学びたい」と感じます。
完璧を演じるほど、言葉は遠くなる
私はこれからも、有益な情報は届けていきたいと思っています。
でも、それだけではなく、その情報にたどり着くまでの背景や、自分自身の試行錯誤もちゃんと入れていきたい。
なぜなら、そこにしか出せない価値があるからです。
有益なノウハウだけなら、誰かがもっと上手にまとめるかもしれない。
AIがもっときれいに整理するかもしれない。
でも、
「私がなぜそれを大事だと思うのか」
「どこでそう感じたのか」
「どんな失敗から学んだのか」
これは、私にしか語れません。
そしておそらく、これからの情報発信では、その部分こそがブランドになります。
完璧に見せることではなく、
自分の経験を通して、ちゃんと人に届く言葉にすること。
これが、AI時代の発信に必要なことだと思っています。
まとめ
人は、完璧な人に憧れます。
でも、信頼するのは、少し人間味のある人です。
プラットフォール効果が教えてくれるのは、
「弱みを見せればいい」という単純な話ではありません。
大事なのは、
実力があること。
価値を届けていること。
その上で、人間らしい失敗や葛藤が見えること。
この3つです。
私は、情報発信の最初の頃、有益なノウハウを出すことに徹していました。
それでポジションを取れた時期もありました。
でも、ビジネス系の発信者が増え、AIが台頭し、正しい情報や網羅的な情報の価値が下がってきた今、本当に大事なのは、そこに人間の文脈があるかどうかだと思っています。
離婚したこと。
うまくいかなかったこと。
遠回りしたこと。
悩んできたこと。
それらは、隠すべき傷ではなく、人とつながるための入口になることがあります。
人は、長所で尊敬され、短所で愛される。
そして、
人間味が、ブランドになる。
これが、私がこの心理から一番学んだことです。
この「完璧な人より、少し欠点のある人の方が愛される」という心理については、YouTubeでも詳しく解説しています。
動画では、
スラムダンクの登場人物がなぜ30年以上愛され続けているのか
アロンソンの実験で、なぜ“コーヒーをこぼした天才”の好感度が上がったのか
ドミノ・ピザが、弱みをさらけ出して復活した理由
個人の発信やビジネスにどう応用すればいいのか
まで、具体例を交えて話しています。
気になる方は、ぜひ動画で見てみてください。














人間らしさ、泥臭さ、どんくささをだしたもんがちと思ってます。
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